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東京高等裁判所 平成10年(ネ)4746号 判決 1999年6月29日

控訴人(被告) 同和火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役 A

右訴訟代理人弁護士 芥川基

被控訴人(原告) X

右訴訟代理人弁護士 馬場榮次

主文

一  原判決主文第二項を取り消す。

二  被控訴人の控訴人に対する請求を棄却する。

三  訴訟費用は、控訴人と被控訴人との間に生じたものは第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

主文と同旨

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二本件事案の概要等

一  事案の概要(当事者間に争いがない。)

1  B(以下「B」という。)は、控訴人との間において、その所有する自動車につき、金車両一括付保特約及び保険料分割払特約付の自動車総合保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結していた。

2  Bは、その保険期間の中途で新たに取得した大型貨物自動車(以下「本件自動車」という。)を有限会社a(以下「a社」という。)に賃貸していたが、訴外C(以下「C」という。)がこれを業務として運転中、平成六年一二月一一日、Dの運転する自動二輪車に追突して同自動二輪車に同乗していたEを死亡させるという交通事故(以下「本件事故」という。)を起こした。

3  右Eの両親は、右Eの法的地位を承継したが、その後父親であるFが死亡したことから、同人の法的地位を妻である被控訴人が単独で承継した。

4  本件交通事故の損害賠償請求訴訟が被控訴人を原告とし、a社、C及び控訴人を各被告として提起され、被告らに各自損害賠償ないし保険金として金一六二六万八八三〇円及びこれに対する遅延損害金の支払を命じる判決がなされ、被控訴人とa社及びCの間では確定した。

5  被控訴人の控訴人に対する主張の要旨は、Bは本件自動車の所有者として運行供用者責任があるので右損害賠償をする義務があり、被控訴人は、本件保険契約において当初に付保されていた自動車に対する保険部分(以下「本件基本保険部分」という。)が失効したとしても、本件保険契約の付保期間の中途に取得されて付保された自動車(以下「中途取得自動車」という。)に関する本件中途付保保険部分(以下「本件中途取得自動車保険部分」という。)は、本件基本保険部分と可分であるから効力が存続しているとして、控訴人に対して前記確定した本件損害賠償額相当額の保険金の支払を求めるとするものである。

6  これに対して控訴人は、本件保険契約においては、保険料は分割払の特約により毎月の分割払であったところ、Bは、平成六年一一月三〇日に支払うべき右分割保険料の支払を怠ったことにより、同特約中の失権約款により本件保険契約は、本件中途取得自動車保険部分を含めてすべて同日の経過をもって失効したと主張しているものである。

二  本件争点の前提事実等(<証拠省略>)

1  Bは、平成五年一二月二九日、控訴人との間において、自動車総合保険(PAP)普通保険約款(平成五年四月一日改定のもの)を基本約定として、特約条項として、全車両一括付保特約及び保険料分割払特約(大口)を付した本件保険を、契約者を春山運送店ことBとし、保険期間を平成五年一二月三一日から平成六年一二月三一日として締結した(当事者間に争いがない)。

(一) 証券番号 <省略>

(二) 台数・総付保 一六台(明細書付、車種・営業用普通貨物車七トン以上、対人賠償保険・無制限等) フリート(全車両一括付保)

なお、保険契約者の所有ないし使用しうる自動車の総付保台数が一〇台以上である者を、フリート契約者と称し、それ以外の者をノンフリート契約者と称するものである。フリート契約者は、ノンフリート契約者より割引された保険料率(多数割引率)の適用を受けることが原則である。

(三) 保険料特定割引 優良割引三〇パーセント、多数割引五パーセント

(四) 保険料合計 六〇九万二七六〇円 初回払込保険料五〇万七七三〇円

(五) 大口・分割回数 一二回(各回五〇万七七三〇円宛)

(六) 一回目払込期日 契約日と同一日

二回目以降払込期日 契約日の翌月から各月末日限り

2  本件保険契約に適用される特約について

(一) 全車両一括付保特約(基本約定)

① この特約は、この保険契約締結時において、保険契約者が自ら使用するために既に取得していた自動車で保険証券記載の条件に該当するもののすべてを、この保険契約によって一括して保険に付し、かつ、保険期間の中途で保険契約者が自ら使用するために取得する自動車で、保険証券記載の条件に該当するもののすべてを、この保険契約によって漏れなく保険に付すこととする場合であって、保険証券にこの特約を適用する旨記載されているときに適用される(一条)。

なお、この特約締結時の総付保台数が九台以下である場合はこの特約は適用できない。

② 保険契約者が自ら使用するために、保険証券記載の条件に該当する自動車を保険期間の中途で取得したときは、この特約により、中途取得自動車にかかわる控訴人の保険責任は、中途取得自動車が保険契約者の直接の管理下に入った時(取得時)に始まり、保険証券記載の末日の午後四時に終わる(二条)。

③ 保険契約者は、毎月保険証券記載の通知締切日前一か月分の中途取得自動車を保険証券記載の通知日までに、控訴人所定の書面により控訴人に通知しなければならない(三条一項)。付保されていた自動車を譲渡等したときも同様である(三条二項)。

④ 第三条一項の通知に遅滞または脱漏があった場合は、遅滞又は脱漏があった中途取得自動車及び控訴人がその遅滞又は脱漏の事実を知った時以降、同項の規定により通知されるすべての中途取得自動車に対して第二条の規定を適用しない(五条)。

⑤ 控訴人は、第三条第一項の通知を受領したときは、その定めるところに従い、追加保険料を請求する(六条一項)。

なお、中途取得自動車についても五パーセントの割引(フリート多数割引)のうえ、追徴保険料を日割り計算する。

(二) 保険料分割払特約(大口)の取り扱い(基本約定)

① 控訴人は、この特約により、保険契約者が年額保険料を保険証券記載の回数及び金額に分割して払込むことを承認する(一条)。

② 保険契約者は、この保険契約の締結と同時に第一回保険料を払込み、第二回目以降の保険料については、保険証券記載の払込期日に払い込まなければならない(二条一項)。

保険契約者が、第二回目以降の保険料について払込期日にその払込みを怠ったときは、この保険契約は、その払込期日から効力を失う(二条二項)。

③ なお、保険料と分割回数については、一二〇万円以上は二回から一二回までの偶数回 その払込額は各回均等払い。

④ 中途取得自動車の契約については、分割払を適用することはできない。ただし、追加保険料に関する保険料分割払特約を付帯する場合はこの限りでない。

(三) 追加保険料に関する保険料分割払特約

① この特約は、保険契約に、保険料分割払特約(大口)及び全車両一括付保特約が重ねて付されているときで、当該保険契約における中途取得自動車の追徴保険料(以下「追加保険料」という。譲渡又は廃車した自動車の返還保険料があるときは、相殺した後の保険料とする。)、又は、契約条件の変更等に伴う追加保険料の額が一〇万円以上であること。

② 右の場合には、追加保険料の分割回数については、現存契約の分割残回数以内の偶数回、又は、当該追加保険料の総額に対応して定められている分割回数。

3  Bは、平成六年一一月一七日、本件自動車を取得したので、同日付で本件保険契約における中途取得自動車として、自動車保険承認請求書(兼異動明細書)をもって控訴人に通知した。なお、その追加保険料は、前記約定によって分割払の対象とならないものであったので、その所定の計算方法である日割計算により六万〇五五〇円と決定された。Bは、同日、その全額を支払った。

4(一)  Bは、本件保険契約における第一二回目の分割保険料(払込期日平成六年一一月末日、金額五〇万七七三〇円)の支払を怠った。

(二)  控訴人はBに対し、平成七年一月一〇日付内容証明郵便をもって、本件保険契約は、自動車保険保険料分割払特約(大口)二条二項により、平成六年一一月末日の経過をもって失効した旨の通知をした。

第三争点

一  被控訴人の主張

全車両一括付保特約つき自動車保険契約は、その特約により、同一の保険契約者の全自動車が便宜的に一個の保険契約でカバーされる形になるが、その実質は複数の保険契約の集合と解釈されるべきである。したがって、本件保険契約がその基本保険部分によって付保されていた自動車についての約定保険料の分割払の支払遅滞があって失効したとしても、それは基本保険部分による付保自動車に関する部分のみであって、中途取得自動車保険部分については、中途取得自動車に関する保険料不払等の約定違反がない限り、その保険契約部分に関する効力は存続するものと解するべきである。その理由は次のとおりである。

(一)  同契約にあっては、中途取得自動車もとりあえず全体の契約の中に入るが、同自動車の保険料及びその支払方法は契約当初の自動車とは別個に計算され、分割払の特約の可否も別途に判断されること。

(二)  本件自動車の保険料は、その保険期間全部に亘って支払済みであること。

二  控訴人の主張

1  全車両一括付保特約付自動車保険は、契約者の取得している複数の自動車を一個の保険契約によって一括して保険に付するとともに、契約者が中途取得自動車も同じ保険契約によって付保するものであるから、一個の契約である。したがって、本件保険契約がその本件基本保険部分による付保自動車に対する分割保険料の不払によって失効したときは、中途取得自動車に関しても同保険部分は失効する。

(一) 一台ごとのノンフリート契約では、自動車の事故歴により保険料も異なり年齢条件も保険期間も個別に決定されるのに対し、全車両一括付保特約つきの場合は、全体の台数と損害率により決定される割引率が全自動車に一律に適用される。

(二) 中途取得自動車についても保険終期は同一とされ、保険会社に対する通知も当該中途取得自動車の増加による保険料の増額分の支払前からその取得後は自動的に付保され、保険料の割引も同一のものが適用される。

2  全車両一括付保特約付自動車保険は、一種の包括保険、予定保険(倉庫保険等)と同種の保険と解すべきであって、中途取得自動車につき、追加保険料の徴収がされるがそれによって、予定保険等にあっても契約締結後にその契約条件の変動、調整を許すものであるから、右性質を変じるものではない。

3  以下の事実も、全車両一括付保特約つき自動車保険契約が個々の自動車に対する分割可能な保険契約の集合体であるとする解釈の理由となし得ないことは、次のとおりである。

(一) 本件保険には、付保の対象となる自動車の台数や種類のみならず個々の自動車の特定が、契約締結の際の別紙明細書(本件においては、証拠として提出されていないが、乙第三号証の記載によるとその存在が推認される。)や中途取得自動車の通知によってされている。しかし、これは保険者の、保険事故の際の処理、再保険付保の手続、モラルリスクの防止等の目的から付保されている対象自動車を確知する必要があるという、保険技術上からの要請であって、それは、予定保険、包括保険等含めてその性質に合わせて必要とされる範囲、程度が決定されるが、個別の確定保険にのみ必須のものではない。

(二) 中途取得自動車は、その取得時に自動的に付保されるものの、一定期間内に通知及び追加保険料の支払がない場合付保されないことにはなるが、これはむしろ、保険契約にあっては、保険料の支払のない限り付保されないことは原則であるのに、全車両一括付保特約付自動車保険にあっては、中途取得自動車は取得日より後の支払をなすべき日に追加保険料を支払えば、支払日以前の事故についても保険金が支払われるという特殊なものであることが示されているにすぎない。

(三) 全車両一括付保特約付自動車保険にあっても、自動車の種類別にその基本取引約款は、例えば自家用車にあっては自家用自動車総合保険普通保険約款(SAP)の、営業車には自動車総合保険普通保険約款(PAP)等の各約款が適用される等、適用される普通約款、契約条件が定められている。しかし、保険契約が一個であっても、種別の異なる自動車には、それぞれに適合した約款が適用されるのが原則である。

(四) 同一保険契約者の所有する自動車であっても、一定の要件を充足する場合には特約の対象外とすることはできるが、それだからといって本件保険契約において対象自動車ごとに個別の保険契約が併存しているわけではない。

(五) 保険料分割払特約(大口)の各回の分割保険料は、大口としてまとめられている保険料総額を分割したもので、各自動車ごとの分割保険料というものは観念されていないし、各自動車ごとへの分割を許容しない。したがって、各回の分割払の一部でも不払があるときは、保険契約全体が失効する。

第四争点に対する判断

一1  本件保険契約に付せられた全車両一括付保特約の趣旨は、保険契約者が、いわゆるフリート契約者と呼ばれる、一〇台以上の多数の自動車を所有ないし使用するものである場合に、その自動車の新たな取得、譲渡、廃車の都度保険の加入や解約等の手続と煩雑さを回避し、かつ付保漏れの虞をなくすために、保険契約者はその所有ないし使用総ての自動車を対象として一括の保険を契約し、かつ、中途取得した自動車についても自動的に付保されるようにして、その中途取得自動車については事後に通知し、保険料を精算して、付保手続の便宜と付保漏れの防止を図ることにあることは、前記基本約定の一ないし六条の内容、目的から明らかである。

そして、全車両一括付保特約は、前記内容からすると、保険の目的物が契約当初から固定的に特定されている場合の特定保険ではなく、一定の標準により保険の目的物の範囲が限定されているものの、その具体的内容が流動的である総括保険(包括保険というのも同義と解される。)であり、保険証券は、保険契約者に特段の事情がない限り一通交付されるだけでそれ自体一個の保険契約と解されるものである。また、中途取得自動車についても自動的に付保される旨が定められていることからすると、保険契約に際し、当事者間で約定した保険証券に記載すべき諸事項のうち、ある事項につき、概括的にはその決定の標準は定まっていても、その細目は未確定のままで契約を成立せしめるものである予定保険(個々の保険目的物に関する保険契約の予約ではない。)としての性質を有していると解されるものである。

なお、予定保険については、甲第一四号証によれば、「将来において個別の損害保険契約を成立せしめるという効果をもつ一種の輪郭契約であって、構造上それ自体が損害保険契約ではない。輪郭契約は、将来被保険利益を特定すべき基準を定め、その確定によって自動的に付保される旨の合意である。その効果としてあらかじめ約定された被保険利益特定のための条件が満たされた時点で、自動的ではあるものの新たに損害保険契約が成立し、それゆえ、その時点で保険料の支払義務が生じるものである。」との学説も存することが認められる。学問上の定義の問題ではあるが、一定の保険契約が成立するという限りにおいて右の判示と実質的相違はないものと解される。

2  そして、多数の所有ないし利用している者が、個々の自動車ごとに個別の自動車保険を締結した場合に比べて、全車両一括付保特約付きの自動車総合保険契約を締結したときは、前記その特約内容からして、次のとおりの有利さがあることも、その特約の内容から明らかである。

(一) 保険契約者にとって、一定期日に一括して通知さえすれば、取得後通知前に生じた事故についても保険金が支払われることによって、前記のとおり中途取得自動車について個別に保険契約を締結する手間と費用を省くことができるし、付保もれによる無保険状態の発生を回避することができる。

(二) 一括特約契約者はフリート契約者として、多数割引率が当然適用されているが、中途取得自動車についての追加保険料については、それ自体が大口の要件を満たさなくても追加保険料の算定において右多数割引率の適用を受けることができるし、また、その追加保険料の支払については、中途取得自動車その取得相当期間後に定められる精算日までの時間的猶予が、個別の保険契約より有利に設けられている。

(三) 保険料分割払特約(大口)(基本約定)において、分割回数において優遇措置を受けられ、さらに中途取得自動車についても、中途取得自動車の保険料額について一定の要件を満たすときは、その追加保険料についての分割回数において優遇措置が受けられる。

(四) 付保されていた自動車の異動、中途更改又は自動車入替における、保険料返還において有利な返還率を受けることができる。

3  全車両一括付保特約を付して、個別保険契約に比べて有利な取り扱いを受けるためには、その手続として、保険契約者は、一つの保険証券のほかにこの特約によって付保される被保険自動車を付属別紙明細表(自動車保険継続申込書「兼契約明細書」)に記載し、また中途取得自動車についても同じくそれを通知し、付属の別紙に記載しなければならないし、毎月、保険証券記載の通知締切日前一か月分の中途取得自動車を保険証券記載の通知日までに通知しなければならないのであって、実務上は保険証券付属の別紙明細書に記載するものとされている。そして、追加保険料の請求を受けたときは、保険証券に記載されて毎月の精算日までに精算しなければならないものとされ、その払込みを懈怠したときは、保険会社は、その精算日に対応する保険証券記載の締切日の一か月前の応答日以降に取得した中途取得自動車について生じた事故については保険金の支払を免責されることとされている。

右のうち、被保険自動車の特定の措置は、保険会社としてもその保険の目的の内容を把握し確認する必要があるので総括予定保険契約の場合には当然の措置である。また、中途取得自動車分の追加保険料の不払に伴う追加分の免責の効果の点は、総括保険の性質を有する基本保険契約において、中途取得自動車についての予定保険部分について、追加保険料の不払等による効力不発生ないし失効事由があっても、契約当事者の合理的意思に沿った措置として、基本保険契約部分に影響を及ぼさせず、いわば、中途取得自動車の取得がなかった場合と同視し、単にその中途取得自動車にかかる保険契約に免責の効果を及ぼせば足りるとし、基本保険契約を有効に存続させるという保険契約者の利益になる取扱いを認めただけのものである。右の措置や追加分の免責の効果があるからといって、本件保険契約が個別保険の集合であると解すべき論拠となるものでない。

二  以上によれば、本件保険契約の保険契約としての基本的な法的構成は、本件保険契約を個別特定保険契約の集合と見ない限り不合理であると見られる内容は存しないこと、本件保険契約者がその所有自動車等につき複数の個別特定保険契約を締結したときには享受しえない、有利な保険契約内容を包括的に得ていること、中途取得自動車もその保険契約に包含されること等に照らして、総括保険、予定保険であると解するのが相当である。

なお、集合保険においても、被害者救済の観点及び本件保険契約のように本件中途取得自動車を保険目的物として保険料が支払われたと見られるような場合等の特段の事情がある場合には、理論上その保険目的物ごとに可分処理の可能性もあるとの意見(甲第一四号証)も存するが、本件保険契約における追加保険料の算定も本件基本保険部分と無関係になされたものでなく、本件保険契約の保険料は、個々の自動車ごとに充当されることは予定されていないものであることは明らかであり、本件被害者の救済という契約外の個別事情を考慮して保険契約一般の解釈をするのも妥当とはいえないから、本件において本件中途取得自動車について本件保険契約上可分のものとして取り扱うのが相当と解すべき特段の事情は認められない。

そうすると前述のとおり本件保険契約に全車両一括付保特約と共に付されていた保険料分割払特約(大口)の基本約定二条二項には、「保険契約者が、第二回以降の保険料について、払込期日にその払込みを怠ったときは、この保険契約は、その払込期日から効力を失う。」と定められているから、本件保険契約者であるBが第一二回目の分割保険料の払込期日である平成六年一一月三〇日にその分割保険料の支払を怠ったことにより、本件保険契約は、平成六年一一月三〇日の経過をもって本件中途取得自動車保険部分を含めて失効したものと認めるべきである。

第五結論

以上によれば、被控訴人の本件請求は理由がないので棄却すべきである。

よって、右と結論を異にする原判決は失当であるので、これを取消すこととして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鬼頭季郎 裁判官 慶田康男 廣田民生)

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